STEAM教育とは
STEAM教育とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)の5つの分野を統合的に学ぶ、ワクワクする学びです 1。従来の教育のように各教科を独立して学ぶのではなく、これらの分野を横断的に学習し、それぞれの知識やスキルを関連付けながら、より深い理解と応用力を育むことを目指します。STEAM教育では、学習者は自身の経験を通して、様々な事柄を認識し、それらの間の類似点や相違点を理解することで、概念を形成していきます。そして、これらの概念を基に、未来の出来事を予測し、新たな価値を創造していく力を養うのです 3。
従来の教育との違い
従来の教育は知識の習得に重点が置かれ、各教科を独立して学ぶことが一般的でした。一方、STEAM教育では、知識の習得に加えて、問題解決能力や創造性、批判的思考力など、実社会で必要とされる能力の育成を重視します 4。
STEAM教育では、生徒たちは現実世界の問題や課題に取り組み、解決策を探求する中で、STEAMの各分野の知識やスキルを総合的に活用します。さらに、アクティブラーニング(能動的学習)のアプローチを採用し、生徒の主体性と対話を重視することで、より深い学びを促進します 5。従来の教育とは異なり、STEAM教育は分野横断的な思考を促進し、従来の教科の枠を超えた、より包括的な理解と問題解決能力を育むことを目指します 5。
STEAM教育が重視される背景
STEAM教育が重視される背景には、社会の急速な変化と、それに伴う人材育成の必要性があります。現代社会は、グローバル化、情報化、AI化など、かつてないスピードで変化しており、従来の知識やスキルだけでは対応できない状況になっています 7。筑波銀行の月報によると、Society 5.0 と呼ばれる超スマート社会では、高度な専門知識と自由な発想力、前例のない問題に向き合う力を兼ね備えた、社会を「変革」できる人材が求められています 7。
文部科学省は、Society 5.0 の実現に向けた人材育成において、STEAM教育の重要性を強調しています 8。これは、様々な情報を活用し、統合的に捉え、問題の発見と解決、そして社会的な価値の創造につなげる能力が必要とされているからです。
しかし、日本の高等教育には課題も存在します。中学1年生から高校2年生にかけて学校の授業に対する満足度は低下する傾向にあり、高校に入ると学校外の勉強時間は二極化するという現状があります 6。
さらに、ロボット化が進む中で、ロボットに使われるのではなく、「新たな変化を生み出せる能力を持つ人材」が必要とされています 9。変化を生み出すことができるデザイナーやエンジニアは世界的に不足しており、STEAM教育を通して育成することが急務となっています。
STEAM教育の目的
STEAM教育の目的は、以下の通りです 10。
- 文章や情報を正確に読み解く力を身につける
- 科学的に思考・活用する力を身につける
- 新しい価値を生み出す感性と力を身につける
- AIやデジタル技術を使いこなす人材を育成する
- 学習への主体性を養う
- 社会的な問題を解決する活動を通して、自己の幸せとよりよい社会を実現するために必要な資質・能力を育成する
各分野の役割と相互の関係性
STEAM教育における各分野の役割と相互の関係性は以下の通りです。
- Science(科学): 自然現象や科学的原理を理解し、探求する能力を育む。
- Technology(技術): 科学的知識を応用し、問題解決に役立てるための技術を習得する。
- Engineering(工学): 技術を駆使して、ものづくりや問題解決を行う能力を育む。
- 産業で必要となる「生産力」や「空間的把握能力」の育成にも役立ちます 12。
- Art(芸術・リベラルアーツ): 創造性、表現力、感性を育む。
- 自由な発想力や想像力を育み、作品を生み出すことで「創造力」を育てます 12。
- アメリカ教育省はSTEAMの「A」が芸術5教科であることを明言しており、アーツ・インテグレーションがSTEAMの源流であるとして、芸術の視点からSTEAMを捉えています 13。
- 芸術には、生活、経済、法律、政治、倫理等を含めた広い範囲 (Liberal Arts) で定義することも重要です 6。
- 人文科学、社会科学、自然科学、学際・統合科学といった幅広い分野の学びも求められています 12。
- Mathematics(数学): 論理的思考力、問題解決能力、数理的処理能力を育む。
- 公式などの法則に触れ、「論理的思考力」を養います 12。
- これからのAI社会を考えると、純粋数学だけでなく、応用数学やAIそのものの基礎を学べるようにする必要があります 14。
- データサイエンスに関わる統計学習も重要です 14。
STEAM教育では、これらの分野を統合的に学習することで、各分野の知識やスキルを相互に関連付け、より深い理解と応用力を育みます。
例えば、ロボット製作の授業では、
- 科学的な知識を応用してロボットの構造を理解します。
- 技術的なスキルを駆使してロボットを製作します。
- 芸術的な感性でロボットのデザインを考えます。
- 数学的な知識を用いてロボットの動きを制御します。
このように、STEAMの各分野が相互に関連し合いながら学習が進められます 12。
STEAM教育が未来のリーダー育成にどのように役立つのか
STEAM教育は、未来のリーダーに必要な以下の能力を育むことができます。
- 問題解決能力: 複雑な問題を分析し、解決策を考案する能力。
- 感性だけで課題を設定するのではなく、データに基づき問題の原因を分析した上で課題を設定し、試行錯誤を繰り返すことで、問題解決のための資質・能力が育成されます 11。
- 批判的思考力: 情報を多角的に分析し、論理的に思考する能力。
- 創造性: 新しいアイデアを生み出し、革新的な解決策を創り出す能力。
- 小学校のSTEAM教育では、遊びを通して、新しいアイデアを生み出す力を育むことができます 15。
- コミュニケーション能力: 自分の考えを明確に伝え、他者と協力して問題解決にあたる能力。
- 小学校のSTEAM教育では、仲間と協力して課題を解決する協調性を育むことができます 15。
- リーダーシップ: チームをまとめ、目標達成に向けて導く能力。
STEAM教育では、生徒たちは現実世界の問題や課題に取り組む中で、これらの能力を総合的に身につけていきます。STEAM教育は、21世紀型スキルとも呼ばれる、批判的思考、創造性、コラボレーション、コミュニケーションといった、未来社会で必要とされる重要なスキルを育成する上で重要な役割を果たします 7。
具体的な事例
筑波大学では、「STEAMリーダーシッププログラム」を開講し、未来のリーダー育成を目指しています 17。このプログラムでは、STEAM教育の要素を取り入れたワークショップやプロジェクトを通して、学生たちの問題解決能力、批判的思考力、創造性などを育成しています。
STEAM教育を実践している教育機関や企業の取り組み事例
STEAM教育は、世界中の教育機関で導入が進んでいます。
- 日本: 文部科学省は、STEAM教育を推進しており、全国の小学校、中学校、高等学校で、さまざまな取り組みが始まっています 18。例えば、プログラミング教育や探究的な学習などが導入されています。
- 科学の甲子園は、STEAM教育を実践する場として注目されています 12。
- JTB BWTは「未来探究祭」というイベントを開催し、受講校がSTEAM教育の成果を発表する場を提供しています 19。
- 海外: アメリカでは、STEM教育にArt(芸術)を加えたSTEAM教育が、国家戦略として推進されています。シンガポールでは、政府直属のSTEAM教育機関であるサイエンスセンターが設立され、高度なSTEAM教育が提供されています 12。
企業も、STEAM教育に積極的に取り組んでいます。
- Google: Googleは、子供向けのプログラミング教育ツールやワークショップを提供しています。
- Microsoft: Microsoftは、STEAM教育を支援するためのソフトウェアや教材を開発しています。
STEAM教育を効果的に実践するためには、学校文化も重要な要素となります 20。生徒の創造的な時間を増やし、教科横断的な学習を促進し、教員がワクワクするような課題を設定することが重要です。
STEAM教育の課題と今後の展望
STEAM教育は、未来を担う人材育成のための重要な取り組みですが、いくつかの課題も存在します。
- 教員の不足: STEAM教育を指導できる教員が不足している。
- 教育環境の整備: STEAM教育に必要な設備や教材が不足している。
- 日本の学校では、インターネット環境の整備が十分でない場合があります 21。
- 評価方法の確立: STEAM教育の効果を適切に評価する方法が確立されていない。
- 生徒の意識改革: 生徒たちが失敗を恐れずに、積極的に課題に取り組めるようなマインドセットを育む必要がある 20。
これらの課題を解決し、STEAM教育をより効果的に推進するためには、以下の取り組みが必要となります。
- 教員養成: STEAM教育を指導できる教員の養成を強化する。
- 教育環境の整備: STEAM教育に必要な設備や教材を充実させる。
- 評価方法の開発: STEAM教育の効果を適切に評価できる方法を開発する。
- 社会との連携: 企業や地域社会との連携を強化し、STEAM教育を社会全体で推進する。
- 新教科の導入: 文部科学省は、新教科「テクノロジー科」(仮称) の導入を検討しており、コンピュータサイエンス、情報通信ネットワーク、プログラミング、AIの活用など、Society 5.0 時代に対応した内容を盛り込むことが期待されています 22。
日本におけるSTEAM教育の現状と、海外との比較分析
日本では、2018年に文部科学省が「Society 5.0に向けた人材育成 ~社会が変わる、学びが変わる~」を発表し、STEAM教育に対する取り組みが本格化しました 8。GIGAスクール構想による1人1台端末の導入など、教育環境の整備も進められています 12。しかし、海外に比べると、STEAM教育の導入は遅れており、教員の不足や教育環境の整備など、多くの課題を抱えています 21。
海外との比較
| 項目 | 日本 | 海外 |
|---|---|---|
| 導入状況 | 導入段階 | 普及段階 |
| 教員 | 不足 | 充実 |
| 教育環境 | 整備中 | 充実 |
| 評価方法 | 確立されていない | 確立されている |
参考文献・ウェブサイト
STEAM教育に関する参考文献やウェブサイトは、以下の通りです。
参考文献
- 文・理を融合してリーダーを育てる「STEAM教育」 川村 一彦 (著) 23
- よくわかるSTEAM教育の基礎と実例 24
- 日本型STEM教育のための理論と実践 25
ウェブサイト
- 文部科学省 – STEAM教育等の各教科等横断的な学習の推進 26
- サイエンスティーム 探究でつながる学びと科学「ScienceTEAM」 – 学習活用サイト 27
- G-STEAMコンソーシアム 28
- STEAM Campus 29
結論
STEAM教育は、未来のリーダー育成のための重要な教育方法です。STEAM教育を通して、子供たちは、問題解決能力、批判的思考力、創造性、コミュニケーション能力、リーダーシップといった、未来社会で必要とされる能力を育むことができます。
STEAM教育は、単なる知識の詰め込みではなく、子供たちが自ら課題を発見し、解決策を探求するプロセスを通して、主体的な学習姿勢を育むことを目指します。また、現実世界の問題に取り組むことで、子供たちは社会への貢献意識を高め、よりよい社会を創造する意欲を育むことができます。
日本におけるSTEAM教育は、まだ導入段階ですが、文部科学省の推進やGIGAスクール構想によるICT環境の整備など、着実に進展しています。今後、教員の養成、教材の開発、評価方法の確立など、さらなる課題解決に向けた取り組みが重要となります。
STEAM教育は、子供たちが未来社会を生き抜き、よりよい社会を創造していくために必要な力を育む、未来への投資と言えるでしょう。
引用文献
1. www.skymenu.net, 12月 27, 2024にアクセス、 https://www.skymenu.net/media/article/2001/#:~:text=STEAM%E6%95%99%E8%82%B2%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81%E3%80%8C%E7%A7%91%E5%AD%A6,%E5%AD%A6%E3%81%B6%E6%95%99%E8%82%B2%E3%81%AE%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
2. STEAM教育 – 学校図書, 12月 27, 2024にアクセス、 https://gakuto.co.jp/docs/other/pdf/TEADA_2022vol04_web.pdf
3. (PDF) STEM/STEAM 教育の構成概念 – ResearchGate, 12月 27, 2024にアクセス、 https://www.researchgate.net/publication/350168116_STEMSTEAM_jiaoyunogouchenggainian
4. STEM教育とは? 背景やSTEAM教育との違い、事例を解説 – SKYMENU Cloud, 12月 27, 2024にアクセス、 https://www.skymenu.net/media/article/3256/
5. いま注目のSTEAM教育とは?わかりやすく簡単に解説!実践 … – EDIX, 12月 27, 2024にアクセス、 https://www.edix-expo.jp/hub/ja-jp/blog/blog07.html
6. STEAM教育等の教科等横断的 な学習の推進について – 文部科学省, 12月 27, 2024にアクセス、 https://www.mext.go.jp/content/20240401-mxt_kyouiku01-000016477.pdf
7. STEAM教育の展望, 12月 27, 2024にアクセス、 https://www.tsukubabank.co.jp/corporate/info/monthlyreport/pdf/2020/07/202007_12.pdf
8. 文部科学省が重視するSTEAM教育とは?成り立ちや日本での取り組み・課題などを解説, 12月 27, 2024にアクセス、 https://www.kddimatomete.com/magazine/221226142824/
9. 【STEAM教育】日本と世界の取り組みをわかりやすく解説, 12月 27, 2024にアクセス、 https://miraii.jp/stem-6
10. 文部科学省が推奨するSTEAM教育|学習効果や現状の課題を解説 – プロクラ, 12月 27, 2024にアクセス、 https://www.programming-cloud.com/column/children/2024-04-23/
11. STEAM教育のすすめ, 12月 27, 2024にアクセス、 https://steam.codomode.org/wp-content/uploads/STEAM%E6%95%99%E8%82%B2%E3%81%AE%E3%81%99%E3%81%99%E3%82%81.pdf
12. STEAM教育とは?先生視点で考えるSTEAM教育の課題と展望 …, 12月 27, 2024にアクセス、 https://www.justsystems.com/jp/products/smilenext/article/steam.html
13. STEAM入門 : 日本STEAM教育リサーチセンター | 学術研究出版 – BookWay, 12月 27, 2024にアクセス、 https://bookway.jp/modules/zox/index.php?main_page=product_info&products_id=1586
14. これまでのSTEM教育と今後の展望, 12月 27, 2024にアクセス、 https://www.j-stem.jp/wp/wp-content/uploads/2018/12/JournalVol1_01-3-7.pdf
15. 小学校で学ぶSTEAM教育についてわかりやすく解説! – プログラボブログ – proglab, 12月 27, 2024にアクセス、 https://proglab.tokyo/steaminschool/
16. STEAM教育とは?期待できる効果や国内外の取り組みについて解説, 12月 27, 2024にアクセス、 https://article.toysrus.co.jp/column/944/
17. 筑波大学 STEAM リーダーシッププログラム, 12月 27, 2024にアクセス、 https://www.namagaku.tsukuba.ac.jp/
18. STEAM教育とは? 推進されている背景やメリット、国内外の事例を …, 12月 27, 2024にアクセス、 https://www.skymenu.net/media/article/2001/
19. 学校・教育機関向け サービス 中学・高校向け STEAM教育, 12月 27, 2024にアクセス、 https://www.jtbbwt.com/education/service/issue/jh/steam/
20. STEAM教育の実践例に学ぶ「聖徳学園中学・高等学校」, 12月 27, 2024にアクセス、 https://sip.dis-ex.jp/article/185
21. 日本のSTEM教育の現状, 12月 27, 2024にアクセス、 http://stem-labo.com/page1.html
22. 初等中等教育における STEAM 教育の導入と テクノロジー教育の拡充・刷新について, 12月 27, 2024にアクセス、 https://www.jste.jp/main/teigen/240528_statement.pdf
23. 文・理を融合してリーダーを育てる「STEAM教育」 | 川村 一彦 |本 | 通販 | Amazon, 12月 27, 2024にアクセス、 https://www.amazon.co.jp/%E6%96%87%E3%83%BB%E7%90%86%E3%82%92%E8%9E%8D%E5%90%88%E3%81%97%E3%81%A6%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%92%E8%82%B2%E3%81%A6%E3%82%8B%E3%80%8CSTEAM%E6%95%99%E8%82%B2%E3%80%8D-%E5%B7%9D%E6%9D%91-%E4%B8%80%E5%BD%A6/dp/4344940970
24. 『よくわかるSTEAM教育の基礎と実例』(藤岡 達也 – 講談社BOOK倶楽部, 12月 27, 2024にアクセス、 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000372488
25. 日本型STEM教育のための理論と実践 | 学校図書株式会社, 12月 27, 2024にアクセス、 https://gakuto.co.jp/webshop/stem
26. STEAM教育等の各教科等横断的な学習の推進 – 文部科学省, 12月 27, 2024にアクセス、 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/mext_01592.html
27. 探究・STEAM 教育関連サイト – サイエンスティーム, 12月 27, 2024にアクセス、 https://scienceteam.jst.go.jp/links/steam-web/
28. 一般社団法人国際STEAM教育推進機構 | 学びながら遊び、遊びながら学ぶ, 12月 27, 2024にアクセス、 https://gsteam.or.jp/
29. STEAM Campusの教育|スティームキャンパス, 12月 27, 2024にアクセス、 https://steamcampus.jp/education/


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