ジェンダー平等が切り拓く、未来の働き方
近年、世界的にジェンダー平等への関心が高まり、企業におけるダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の重要性が叫ばれています。日本においても、政府が「女性活躍推進」を掲げ、企業も積極的に取り組み始めています。
ジェンダー平等とは、単に女性を優遇することではありません。1 性別に関わらず、すべての従業員がそれぞれの個性と能力を最大限に発揮できる環境を作ることで、企業は大きなメリットを得られます。従業員満足度や生産性の向上、企業イメージの向上など、多岐にわたる効果が期待できるのです。2 3 4
本稿では、ジェンダー平等が促進された職場における従業員の働き方や意識の変化、そして企業にもたらすメリット、さらにはジェンダー平等を推進するための企業側の取り組み事例などを紹介します。
ジェンダー平等が促進された職場における変化
ジェンダー平等が促進された職場では、従業員の働き方や意識にどのような変化が見られるのでしょうか?
働き方の変化
多様な働き方の導入
従来の日本企業では、長時間労働や転勤などが当たり前とされ、結婚や出産を機に退職する女性が多くいました。5 しかし、ジェンダー平等が進んだ職場では、フレックスタイム制やリモートワークなど、多様な働き方が導入され、従業員一人ひとりのライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能になります。6
例えば、アクセンチュア株式会社では、フレックスタイム制やリモートワーク、短日・短時間勤務制度など、柔軟な働き方を導入することで、取締役会の50%を女性で構成することに成功しています。7 また、資生堂は、コアタイムのないフレックスタイム制と、リモートワークとオフィスワークを組み合わせた「資生堂ハイブリッドワークスタイル」を導入し、誰もが働きやすい環境を整備しています。8 これにより、2023年時点で国内の女性管理職比率は37.6%に上昇し、グローバルでは女性管理職比率58.1%、取締役・監査役の女性比率40.0%を実現しています。8
仕事と育児の両立
子育て中の女性は、フレックスタイム制を利用することで、子どもの送り迎えや急な病気にも対応しやすくなります。また、リモートワークを導入することで、育児と仕事の両立がしやすくなるだけでなく、通勤時間の削減や集中しやすい環境の確保など、多くのメリットを享受できます。9
男性の働き方への影響
このような柔軟な働き方は、女性だけでなく、男性にとってもメリットがあります。男性も育児や介護に参加しやすくなり、ワークライフバランスを実現できるようになります。10
意識の変化
固定的な性別役割分担意識からの脱却
従来の日本では、「男性は仕事、女性は家庭」という固定的な性別役割分担意識が根強く、女性は仕事よりも家庭を優先すべきという考え方が一般的でした。11 しかし、ジェンダー平等が進んだ職場では、このような意識は薄れ、男女ともに仕事と家庭を両立させることが当然と捉えられるようになります。12
女性のキャリア意識の向上
女性は男性と同じようにキャリアを築きたいという意識が高まり、管理職やリーダーを目指す女性が増加します。4
男性の家事・育児への参加意識の向上
男性も、家事や育児は女性だけの仕事ではないという意識を持つようになり、積極的に家庭に参加するようになります。
ジェンダー平等に対する意識の世代間格差
ジェンダー平等に対する意識は、世代間で差が見られるという指摘もあります。13 若い世代ほど性別役割分担意識が柔軟である一方、 older generations では従来の考え方にとらわれている傾向があるようです。
ジェンダー平等がもたらす企業へのメリット
ジェンダー平等は、従業員だけでなく、企業にも多くのメリットをもたらします。
従業員満足度の向上
多様な働き方が可能になることで、従業員は仕事とプライベートの両立がしやすくなり、ストレス軽減やワークライフバランスの実現につながります。14 その結果、従業員のモチベーションやエンゲージメントが向上し、離職率の低下や人材の定着に繋がります。15
生産性向上
多様な視点の活用
多様な人材が活躍できる環境を作ることで、様々な視点やアイデアが生まれ、イノベーションが促進されます。16
女性の経済活動への参加
女性の労働参加率の増加は、経済成長に大きく貢献するという研究結果もあります。17 女性の能力を活かすことで、生産性向上や経済活性化に繋がります。
企業イメージ向上
ジェンダー平等に積極的に取り組む企業は、社会的な責任を果たしている企業として、顧客や投資家から高く評価されます。3 その結果、企業イメージの向上やブランド価値の向上に繋がり、優秀な人材を獲得しやすくなるというメリットもあります。2
ジェンダー平等を推進するための企業側の取り組み事例
ジェンダー平等を推進するためには、企業側の積極的な取り組みが不可欠です。以下に、具体的な取り組み事例を紹介します。
- 研修: ジェンダー平等に関する研修を実施し、従業員の意識改革を促進する。12 アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)に関する研修なども有効です。
- 意識改革: 管理職やリーダー層に対して、ジェンダー平等に関する意識改革を促すための研修やセミナーを実施する。6
- ダイバーシティ推進: 女性だけでなく、LGBTQ+や外国人など、多様な人材が活躍できるような制度や環境を整備する。18
- 数値目標の設定: 女性管理職比率などの数値目標を設定し、達成状況を定期的に公表することで、ジェンダー平等に向けた取り組みを促進する。4
- 働き方改革: フレックスタイム制やリモートワークなど、柔軟な働き方を導入することで、従業員一人ひとりが働きやすい環境を作る。6
- 育児・介護支援: 育児休業制度や介護休業制度などを充実させ、従業員が仕事と家庭を両立しやすい環境を作る。19 男性の育児休業取得を促進するための取り組みも重要です。
- 相談窓口の設置: ハラスメントなどの相談窓口を設置し、従業員が安心して働ける環境を作る。7
政府の取り組みと法的枠組み
ジェンダー平等を推進するために、国も様々な法律や政策を制定しています。
男女雇用機会均等法
職場における男女差別を禁止し、均等な雇用機会を保障するための法律。12
女性活躍推進法
女性が活躍できる社会の実現を目指し、企業に女性の活躍状況に関する情報開示を義務付ける法律。14
次世代育成支援対策推進法
仕事と子育ての両立を支援するための法律。企業に、従業員の仕事と子育ての両立を支援するための行動計画の策定を義務付けています。19
男女共同参画社会基本法
男女共同参画社会基本法は、「男女の人権が尊重され、かつ、社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会を実現すること」を目的としています。20 この法律では、国、地方公共団体、国民それぞれにジェンダー平等を推進する責務があることを明確にしています。
政策動向
これらの法律や政策に加え、政府は男性の育児休業取得促進や女性の管理職登用など、様々な取り組みを推進しています。21
ジェンダー平等推進における課題
ジェンダー平等を推進する上で、いくつかの課題も存在します。
男性中心型労働慣行
日本企業には、長時間労働や転勤を前提とした、いわゆる「男性中心型労働慣行」が根強く残っている場合があります。3 このような慣行は、女性だけでなく、男性の働き方やワークライフバランスにも悪影響を及ぼす可能性があります。
無意識の偏見
アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)は、ジェンダー平等を阻害する要因の一つとして挙げられます。3 企業は、研修などを通じて、従業員の無意識の偏見を解消するための取り組みを行う必要があります。
男性の役割
ジェンダー平等を実現するためには、男性の積極的な参加が不可欠です。22 男性は、家事や育児に積極的に参加することで、女性の負担を軽減し、女性が仕事に専念できる環境を作る必要があります。また、従来の「男らしさ」にとらわれず、多様な働き方を選択できるよう、社会全体の意識改革も必要です。
仕事とケアの両立
30代前後の男女は、仕事で責任ある立場を任される一方で、結婚・出産・育児など、家族のケアにも多くの時間が必要となる「人生のラッシュアワー」を迎えます。23 ジェンダー平等を実現するためには、男女ともに仕事とケアを両立できるような社会制度や企業の支援体制が重要となります。
専門家・有識者の意見・展望
ジェンダー平等と働き方の未来について、専門家や有識者はどのように考えているのでしょうか?
ジェンダー平等と経済成長
多くの専門家は、ジェンダー平等は単なる社会正義の問題ではなく、経済成長や社会発展にも不可欠であると指摘しています。24 女性の能力を活かすことで、イノベーションが促進され、生産性も向上するという意見もあります。25
テクノロジーの進化と働き方の変化
AIや automation などの技術革新が進む中で、従来の働き方が大きく変化していくことが予想されます。26 このような変化に対応するためには、多様な人材がそれぞれの能力を活かせる柔軟な働き方が必要であり、ジェンダー平等はその実現に不可欠な要素であるという意見もあります。27
社会的障壁の克服
ジェンダー平等を実現するためには、女性の社会進出を阻む社会的障壁を克服する必要があります。28 意識改革、法制度の整備、企業の取り組みなど、多角的なアプローチが必要です。
パンデミックの影響
COVID-19のパンデミックは、女性の雇用に大きな影響を与え、ジェンダー平等を後退させる可能性も指摘されています。24 Indeed Japanの調査によると、第一子の出産や育児を機に、約3分の2の女性が仕事や働き方を変えており、そのうち13.7%が仕事を辞めた、または辞める予定と回答しています。29
結論:ジェンダー平等が創造する、より良い未来
ジェンダー平等は、従業員一人ひとりが自分らしく働き、その能力を最大限に発揮できる社会を実現するための重要な鍵です。企業は、積極的にジェンダー平等を推進することで、従業員満足度や生産性の向上、企業イメージの向上など、多くのメリットを得ることができます。
政府の政策や法律、そして企業の取り組みが相まって、日本のジェンダー平等は少しずつ進展しています。しかし、世界的に見ると、日本は依然として遅れをとっているのが現状です。7 今後、さらにジェンダー平等を推進していくためには、企業だけでなく、社会全体で意識改革を進めていく必要があります。
ジェンダー平等が実現した未来の職場では、性別に関わらず、すべての従業員がそれぞれの個性と能力を活かし、いきいきと働くことができるでしょう。そして、そのような職場は、イノベーションを生み出し、社会の発展に貢献していくことができるでしょう。
引用文献
1. 勉強や仕事で「女の子だから」差別されることがある? | 日本財団ジャーナル, 1月 8, 2025にアクセス、 https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2023/97905/sdgs
2. 村尾氏が語る「ジェンダー平等の実現」のために中小企業ができること|ライブラリ, 1月 8, 2025にアクセス、 https://work-life.anshin-csr.jp/library/sdgs/sdgs_04/
3. 職場におけるジェンダー平等推進ガイドブック, 1月 8, 2025にアクセス、 https://www.gender-e.pref.kagoshima.jp/geCMS/wp-content/uploads/2022/04/6b9d677d407904f3b72ce4074287655d.pdf
4. SDGsの目標5「ジェンダー平等」とは?| 日本・世界の現状や企業の取り組み事例を紹介, 1月 8, 2025にアクセス、 https://www.jmam.co.jp/hrm/column/0061-sdgs-diversity.html
5. 第5章 性別役割分業、長時間労働とジェンダーバイアス, 1月 8, 2025にアクセス、 https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/fy2021/shigoto_report05.pdf
6. ジェンダー不平等(男女格差)とは?男女格差を克服するために企業が取り組むべき施策も紹介, 1月 8, 2025にアクセス、 https://www.pasona.co.jp/clients/service/column/women/genderfubyodo/
7. 日本に根強く残るジェンダー問題とは 解消に向けた取り組み事例も紹介 – ELEMINIST, 1月 8, 2025にアクセス、 https://eleminist.com/article/3176
8. ジェンダー平等事例集 – グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン, 1月 8, 2025にアクセス、 https://www.ungcjn.org/library/gender/files/Gender_Equality_Initiatives_jp.pdf
9. ジェンダー平等と働き方改革:多様性がもたらす新しい職場の未来 | Reinforz Insight, 1月 8, 2025にアクセス、 https://reinforz.co.jp/bizmedia/44243/
10. メリットばかりじゃないーー「フレックス勤務は男女格差解消に逆効果」という落とし穴, 1月 8, 2025にアクセス、 https://www.newsweekjapan.jp/stories/woman/2018/08/post-24.php
11. Gender and Work: A Comparison of Changing Roles in Work in Western Society and Japan, 1月 8, 2025にアクセス、 https://kuis.repo.nii.ac.jp/record/1608/files/GLCS_7_25_36.pdf
12. 働く場 で実践する男女平等 – 西東京市, 1月 8, 2025にアクセス、 https://www.city.nishitokyo.lg.jp/siseizyoho/sesaku_keikaku/keikaku/sisei/danjobyodo_2.files/03.pdf
13. 有配偶女性のジェンダー意識・仕事意識と子どもへの影響―2014年「女性の活躍」調査の分析よ, 1月 8, 2025にアクセス、 https://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/16j042.pdf
14. 男性が多い業界の「ジェンダー平等」- 女性の活躍を後押しする社内の意識改革 | Worker’s Resort, 1月 8, 2025にアクセス、 https://www.workersresort.com/articles/gender_equality/
15. 「男女間賃金格差」は、なぜなくならない?!日本におけるジェンダーギャップをひもとく ~世界と比べる『働く×ジェンダー平等』座談会【前編】~ – iction!(イクション) – リクルート, 1月 8, 2025にアクセス、 https://www.recruit.co.jp/sustainability/iction/ser/gender-wagegap/001.html
16. 男女格差を縮め世界経済を押し上げる方法, 1月 8, 2025にアクセス、 https://www.imf.org/ja/Blogs/Articles/2022/09/08/how-to-close-gender-gaps-and-grow-the-global-economy
17. 男女格差の解消 経済的利益は想定を上回る, 1月 8, 2025にアクセス、 https://www.imf.org/external/japanese/np/blog/2018/112918j.pdf
18. 多様性(ダイバーシティ)とは?SDGsで求められるダイバーシティや企業の取組み事例を紹介, 1月 8, 2025にアクセス、 https://www.hrpro.co.jp/miraii/post-909/
19. 就労のジェンダー平等と育休環境のあるべき姿, 1月 8, 2025にアクセス、 https://www.jri.co.jp/file/report/jrireview/pdf/14960.pdf
20. 男女共同参画社会基本法 – 法律, 1月 8, 2025にアクセス、 https://www.gender.go.jp/about_danjo/law/kihon/9906kihonhou.html
21. 今週の男女共同参画に関するデータ, 1月 8, 2025にアクセス、 https://www.gender.go.jp/research/weekly_data/index.html
22. 第1節 働き方や就業に関する意識の変遷、家事・育児等・働き方の現状と課題, 1月 8, 2025にアクセス、 https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r05/zentai/html/honpen/b1_s00_01.html
23. 時間分配のジェンダー平等 – 労働政策研究・研修機構, 1月 8, 2025にアクセス、 https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2024/05/pdf/004-018.pdf
24. コロナショックが促すジェンダー平等-働き方改革・男性家事参画・女性管理職登用の再始動を, 1月 8, 2025にアクセス、 https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=38791
25. ジェンダー平等を目指して~すべての女性が声をあげて、立ちあがるために, 1月 8, 2025にアクセス、 https://www.plan-international.jp/blog/20200923_7363/
26. ジェンダー平等のご意見番! 羽生祥子さんにお聞きする、「現場の超リアルな現状」と「取り組みのコツ」|企業のDEIの現在地 vol.1|講談社SDGs by C-station, 1月 8, 2025にアクセス、 https://sdgs.kodansha.co.jp/news/topics/45277/
27. ジェンダー平等に向けて大跳躍:より良い仕事の未来をすべての人に, 1月 8, 2025にアクセス、 https://www.ilo.org/ja/publications/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E5%B9%B3%E7%AD%89%E3%81%AB%E5%90%91%E3%81%91%E3%81%A6%E5%A4%A7%E8%B7%B3%E8%BA%8D%EF%BC%9A%E3%82%88%E3%82%8A%E8%89%AF%E3%81%84%E4%BB%95%E4%BA%8B%E3%81%AE%E6%9C%AA%E6%9D%A5%E3%82%92%E3%81%99%E3%81%B9%E3%81%A6%E3%81%AE%E4%BA%BA%E3%81%AB
28. 職業の男女平等を実現するには?ジェンダーギャップ指数から見る男女格差の現状と課題, 1月 8, 2025にアクセス、 https://carryme.jp/magazine/gender-gap/
29. 共働きの子育て夫婦視点から考える「働き方のジェンダーギャップ解消」とは? | マイナビニュース, 1月 8, 2025にアクセス、 https://news.mynavi.jp/article/20240919-3027985/


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